伊坂幸太郎「重力ピエロ」のカラクリ
伊坂氏の小説がやめられない
好きだから、また書きます。氏の作品は映画化されているものも多く、対比させて読めるところが好きに拍車をかける気がします。
小説のお気に入りはこちら。
- 重力ピエロ
- アヒルと鴨のコインロッカー
- オーデュボンの祈り
- ゴールデンスランバー
- フィッシュストーリー
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04
- メディア: 単行本
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一番最新で2007年のゴールデンスランバーだから、十分古いかも。映画されているものは、こちらです。
- 重力ピエロ(監督:森淳一、主演:加瀬亮・岡田将生)
- アヒルと鴨のコインロッカー(監督:中村義洋、主演:濱田岳・瑛太)
- ゴールデンスランバー(監督:中村義洋、主演:堺雅人)
- フィッシュストーリー(監督:中村義洋、主演:伊藤淳史)
- ポテチ(監督:中村義洋、主演:濱田岳)
今回、ディスクにあった重力ピエロの録画を観るため、小説を読み結構面白かったので興味津々で録画を観て、嬉しくなってブログを書くことにしました。
伊坂幸太郎作品の魅力
一口で言ってしまえばスタイリッシュだと私は思ってます。それでけに、映画化されるのであれば粋な監督の演出と旬の俳優の演技に、原作を膨らませてくれるよう期待してしまう。これまでの作品は、わりとこんな(無名な)私の期待に応えてくれただけに嬉しく思ってます。
ストーリー展開は、システムのプログラミングを思わせるとこありますが、今回重力ピエロで改めて実感したのは、言葉遊びではないですが、「言葉(word)への意味の持たせ方も作品だな」と。何気なく語られる言葉に、結構重要な意味をもたせていたりします。やはりこの辺が、読ませてくれる。別に日本語独特な何かがある訳ではないので、翻訳も可能かと思うけど、訳すのであれば、そういう点も見渡した上で言葉を選ぶ必要がありそうな気がします。
アヒルと鴨のコインロッカーは文としての意味は不明。重力ピエロは短い分、まだ何となく想像はできるかな。それにしても、私はやっぱり好きなようです。
重力ピエロのカラクリ
この作品、まずは「春が二階から落ちてきた」と、伊坂氏独特の文法上成り立つけど意味不明なフレーズで、いきなり読者の心?を掴みます。映画では主役の加瀬亮の朗読があります。加瀬氏はわりと朗読も聞かせてくれる予感が...。話が外れ恐縮ですが、妻夫木聡と綾野剛と並び私の中では、最もいろいろな役柄を見たい役者です。アウトレイジで化けたかと。
さて、この最重要なフレーズは、作品中再度出てきます。
私は小説を読んだとき、2回目に出てくるその真意を汲み取れませんでした。それが、映像を観て理解できたというのが、重力ピエロのカラクリです。小説として、重要なアイディアですが、作品のネタばらしにもならないので、ちょと触れてしまおうかと。
重要なフレーズを髪の毛がある(失礼!)小日向文世に語らせてます。
楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる
私としては「楽しそうに生きていれば」ではなく「楽しく生きていれば」と断定して欲しいとことで...
さて、細かいことはさておき、このフレーズは家族でサーカスのピエロによる空中ブランコの演技の場面で語られます。つまり「悲しい出来事があっても、楽しく生きていれば(ピエロのように)重力は関係ないんだよ」と、父が息子達兄弟に語りかけるのです。
話は戻りまして、冒頭で語られる「春」とは弟の名前であり、弟が平気で二階から落ちてきたのも・落ちてくることができるのも、結局のところ悲しい背景を抱えていても、人生楽しく生きているというメタファーになっているのでした。ということで、まずは冒頭にその掴みがあり、もう一ヶ所ポイント的な場面でこのフレーズが出てくるのです。
ちなみに私は、2回目に出てきたときは、そのカラクリが読み取れず、春(弟)は落ちて死んでしまったのか!と悲劇的文脈に進んでしまいました。
著者の伊坂氏も映画化に際して
僕にとって一番、思い入れがある作品だ。
と言及してます。確かに、よくできているし、映画も非常に上手にまとまってます。さて、次は何を読もうかね。