中央線沿いで暮らす。

遠くに行かなくても楽しいが、たまには遠くへも行きたい!

カズオ・イシグロ氏の作品も語りたい

「わたしを離さないで」はつまらない?

数年前、いや結構前になりますが、職場の男性から新刊の話題作であったわたしを離さないでを借りて読んでみたところ、氏(カズオ・イシグロ)の最高傑作ではないか!と、軽く興奮しました。なのに、その彼からの「え? オレは全然面白くなかったよ」との反応に、なぜ自分が面白く感じたのか考えてしまいました。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

カズオ・イシグロいろいろ

最初に読んだイシグロ作品は初期の作品日の名残り。読後感は悪くなかったものの、正直その良さを実感したのは、ジェームズ・アイボリーの映画を観てから。結局また、映画の力を借りております。


The Remains of the Day - Movie Trailer - YouTube

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

既に他のアイボリー作品は観ていたので抵抗はなく、むしろその世界観は好きでしたので、イシグロ作品である当映画には、自ら進んで刺さってゆきました。しかも、何ともアイボリー好みの題材かと。この作品の良さは若い時分で共感するのは難しく、振り返る過去、しかも「後悔と納得が混じり合っている過去を実感」することで、初めて理解できるのでは?と思ってます。

ちなみに、アイボリー×イシグロの組合せでは上海の伯爵夫人という映画もあり、こちらも「後悔と納得が混じり合っている過去を実感」することで共感できる作品ではと。ただ、「日の名残り」も第二次世界大戦前〜戦後という時代が重要なファクターになっているように、この映画も戦時中の上海であることが重要です。ただでさえ、その時代の上海は魔界と言われるほど魔性に満ちた時代なのであるから、スパイスのように効いて当然です。


The White Countess - Movie Trailer - YouTube

真田広之氏が出演してます。

また、イシグロ作品ではわたしたちが孤児だったころも上海が舞台になっています。私は無謀にも、この作品は原書(英語)で挑戦し、結局あらすじ以上の内容を掴めずに終わってます。

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

いざ「わたしを離さないで」は?

と、つらつら自分の背景を書き連ね、氏の作品への思いを積み重ねてわたしを離さないでを読んでみると、やはりイシグロ氏にとってもチャレンジングだったかと思うのです。

というのも、それまでに氏の重要な「後悔と納得が混じり合っている過去を実感」するための舞台は、戦前〜戦後という困難な実在した時代であったところから、Wikipediaの言葉を借りると「人間と社会の新たな関係」という近未来的な現実と非現実の間に存在しそうな摩訶不思議な舞台へと進化しています。そして、その氏が作り出した舞台のなかで、それまでの氏のワールドを繰り広げているところが、非常に面白かったのです。

Wikipediaにおける「わたしを離さないで」の評価も二分しています。恐らく酷評している方は、イシグロ氏の他の作品はご存知ないような気もします。それと、この作品は土屋政雄訳となってますが、この方が訳す作品に外れはないかと。

ところで、最近のイシグロ氏はどうされているのでしょうかな?

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